睡眠負債って?

睡眠負債とは

睡眠負債とは、睡眠不足が日々借金のように積み重なっていくことの状態を指す言葉として、近年話題になっています。

睡眠負債はただの睡眠不足とは違い、睡眠時間をしっかりとった人でも起こる無自覚の睡眠不足であるといわれます。忙しい生活を送る中で、ついつい寝る時間が少なくなってしまうということも少なくありません。積み重なった睡眠不足は、睡眠負債となり日中の眠気だけでなく、だるさや仕事でのうっかりミスといった業務パフォーマンスが低下していまう影響もあるようです。

睡眠負債の原因と日常生活への影響

体が疲れてないからといって、睡眠をおろそかにしていませんか?疲れていなくても、睡眠時間の不足はダメージとなって積み重なってきます。

理想の睡眠時間は一般的に7時間程度であると言われています。しかし、残念なことに日本人の約4割は毎日6時間未満しか眠れていないようです。2003年にペンシルベニア大学で行われた研究結果では、毎日6時間の睡眠を2週間続けたときと、2日続けて徹夜をした時の脳の反応は同じだったそうです。つまり、毎日6時間の睡眠では身体の疲れが取れているとは言えないことを証明しています。毎日の睡眠で取り切れない疲れは負債となり、積み重なっていきます。これを『睡眠負債』といいます。

睡眠は日中に受けたダメージを回復する大切な時間であり、十分な睡眠を取らないと身体の疲れは取り切れません。十分な睡眠時間は年齢や体質によって異なります。目安として、幼児であれば10時間、小学生で9時間、中高生で8時間といった具合です。成長期の子供は成人と比較すると、長時間の睡眠が必要です。

朝起きて、なぜかだるい、日中ぼーっとする、突然眠気に襲われるといった方は、睡眠負債の可能性が高いです。日中の眠気は仕事の効率を下げるだけではなく、運転中の不注意による事故にもつながりかねません。子供の場合、成長への影響・学習能力の低下・落ち着きがなくなるといった影響が見られます。休日に一気に負債を解消してしまおうと「寝だめ」をしている方もいるかもしれません。ところが、寝だめは睡眠負債をより悪化してしまう原因となります。睡眠負債は一括返済ができない仕組みになっています。

睡眠負債が続くとどうなる?

睡眠負債が続くと、人体にどのような影響があるのでしょうか。睡眠負債によって起こる身体の変化は、以下のようなものがあるようです。

免疫機能の低下
睡眠負債が続くを免疫機能が低下すると言われています。免疫物質は自律神経である副交感神経と大きな相関関係があります。副交感神経h夜間に優勢となる傾向があり、睡眠中のリラックスした状態のもと、免疫物質が作られているといわれています。また、睡眠中に分泌される成長ホルモンも身体を守る役割を担っています。免疫が低下してしまうと、身体の外部からの刺激やバイ菌・ウイルスなどと戦えない体となり、体調を崩しやすくなってしまいます。
2014年のシカゴ大学が行った研究結果によると、睡眠不足にさせたマウスはがん細胞が増殖しやすくなったことが分かりました。これは免疫機能が低下したことで、がん細胞を攻撃する免疫細胞がなんとがん細胞の増殖を手助けする働きをしている可能性があるとのことだったそうです。
糖尿病や肥満のリスク
睡眠負債には血圧や血糖値が上がるリスクもあるようです。この原因として考えられているのは「徐波睡眠」です。徐波睡眠とはノンレム睡眠の3段階と4段階の間の最も深い眠りをいいます。この徐波睡眠では、副交感神経が活発に働いているようです。副交感神経には血圧や血糖値のコントロールをする役割があり、血糖値を下げるインスリンの効きを低下させてしまうと言われています。睡眠負債が慢性化することは、血糖値の高い状態が続くこととなり、慢性化することで高血圧による脳梗塞や心筋梗塞のリスクも上昇し、肥満から糖尿病のリスクにもつながることもあるようです。
認知症リスク
睡眠負債により、認知症のリスクも高まると言われています。認知症の原因は脳に「アミロイドβ」というタンパク質の老廃物が蓄積することで、周囲の細胞を傷つけてしまうことによって起こると考えられています。正常であれば、この老廃物を脳脊髄液が流して排出してくれるのですが、この機能は睡眠中にしか働きません。よって、睡眠負債の場合、この働きを阻害してしまう可能性があるのです。

睡眠負債を改善する習慣あれこれ

重大疾病にならないための日々の習慣、睡眠負債を改善する方法はどのようなものがあるかまとめてみました。

昼寝(シエスタ)する
睡眠負債の解消には15分~30分の仮眠が効果的です。昼寝は短時間で最大限の睡眠効果を発揮すると言われています。つまり、短時間で睡眠負債をへらすことができる眠り方が昼寝です。
実際に実践した方からは、頭がスッキリした、午後の業務に集中できるようになった、との声も上がっており、業務の効率化として社内制度を設ける会社もあるそうです。ただし、30分以上、16時以降の昼寝は逆効果になります。昼寝だけで溜まった負債を全て返済することはできませんので、やはり睡眠時間を確保することが大切です。
ちなみに、15分昼寝の場合、昼寝前にコーヒーを飲むことで、眠りから覚める頃にちょうどカフェインが効いてくるので、より効果的です。
日光浴で体内リズムをリセット
起きてすぐ15秒ほど太陽の光を浴びましょう。カーテン越しでも大丈夫です。太陽の光を浴びることで「メラニン」という睡眠ホルモンの分泌が抑制されます。そのため、日光浴を行うことで体内リズムを整えることが可能となり、睡眠のリズムも整えることができます。また、朝、太陽の光をあびることで14~15時間後にメラトニンが分泌され始めるため、その1時間~2時間後に眠気がやってきます。このように「概日リズム」が確立することが睡眠負債解消のポイントです。
いつもより1時間早く寝る
睡眠負債によってい蓄積された借金は、一括返済を行うことができません。コツコツ返済していくしかありません。生活リズムを崩さないように、いつもより1時間早く寝る習慣をつけていきましょう。生活習慣を見直して、計画的に返済していくことをオススメします。

次に、睡眠の質を上げるためにどのような方法があるかまとめてみました。

就寝30分前にスマホは使わない
スマホの画面から明るい光を浴びることで、誘眠作用のあるメラトニンが抑制され、眠気が訪れなくなります。脳の興奮を抑えるために、就寝30分前はスマホを見ないよう心がけましょう。
夕食と入浴の時間
就寝前はなるべく脳への刺激をなることは避けることで、寝付きがいいとされています。食事や入浴は身体の血液循環を活性化させ、自律神経である交感神経を活発にしてしまい、快眠を妨げてしまいます。夕食は睡眠の3~4時間前、入浴は2時間前までに済ますと良いでしょう。
睡眠前のカフェイン・アルコールの摂取はNG
眠気覚ましにコーヒーを飲むこともあるかと思いますが、カフェインには目を冴えさせる作用があります。また、寝付きにいいとされるアルコールですが、アルコール摂取を習慣づけることで、自然と摂取量が増えてくる傾向があります。睡眠前に過度のお酒を飲むことは、利尿作用により夜中トイレのために起きることになってしまいますので、飲み過ぎには注意しなくてはなりません。